コラム
2026.05.07
防塵・防水規格「IPコード」の 読み方と選び方 屋外ロボット・産業機器導入ガイド

コラム / 2026.05.07
機器が現場で壊れるとき、たいていIPを甘く見ている。
防塵・防水規格「IPコード」の読み方と選び方 ― 屋外ロボット・産業機器導入ガイド

不整地で動くロボットを作り続けてきて、わかったことがある。現場でトラブルになる機器の多くは、IP等級の選択を誤っている。「屋外対応」と書いてあれば大丈夫だろう、という判断が故障を招く。IPコードは読めば読むほど、環境との照合が大事な指標だ。
1. IPコードとは何か
IP(Ingress Protection)コードは、IEC 60529(日本ではJIS C 0920)で定められた国際規格だ。電気機器の筐体が「外部からの固体・液体の侵入に対してどの程度保護されているか」を示す。
ロボット・センサー・制御盤・カメラなど、あらゆる電気機器のスペックシートに記載されている。屋外や過酷な環境で機器を選ぶとき、あるいは自社製品の仕様を決めるとき、IP等級は最初に確認すべき数字のひとつだ。
なぜIPコードが重要か
メーカーが「防水」「防塵」を独自の言葉で表現すると、製品間の比較ができない。IPコードは国際規格として統一されているから、異なるメーカーの機器でも同じ基準で性能を比較できる。現場で機器を選ぶ人間にとっての共通言語だ。
2. IPコードの読み方 ― 数字2桁の意味
IPコードは「IP」に続く2桁の数字で構成される。1桁目が防塵性能、2桁目が防水性能だ。この2つを独立して読む。
1桁目:防塵等級
0〜6
2桁目:防水等級
0〜9K
1桁目:防塵等級(0〜6)
| 等級 | 保護内容 |
|---|---|
| 0 | 保護なし |
| 1 | 直径50mm以上の固体物(手など)の侵入を防止 |
| 2 | 直径12.5mm以上の固体物(指など)の侵入を防止 |
| 3 | 直径2.5mm以上の固体物(工具先端など)の侵入を防止 |
| 4 | 直径1mm以上の固体物(細いワイヤーなど)の侵入を防止 |
| 5 | 粉塵の侵入を完全には防げないが、動作に支障をきたす量は防止 |
| 6 | 粉塵が完全に侵入しない(耐塵形)← 屋外ロボットに求められる基準 |
2桁目:防水等級(0〜9K)
| 等級 | 保護内容 |
|---|---|
| 0 | 保護なし |
| 1 | 鉛直に落ちる水滴(雨)に対して保護 |
| 2 | 15度の範囲で傾斜して落ちる水滴に対して保護 |
| 3 | 60度の範囲の散水(霧雨・小雨)に対して保護 |
| 4 | あらゆる方向からの飛沫に対して保護 |
| 5 | あらゆる方向からの噴流水(ホース直射)に対して保護 |
| 6 | 暴風雨・強い噴流水に対して保護 |
| 7 | 水中(1m・30分)への短時間没水に対して保護 |
| 8 | 継続的な水中使用(メーカー規定条件)に対して保護 |
| 9K | 高圧・高温の噴流水(高圧洗浄機など)に対して保護 |
3. IP65が意味すること
IP65は屋外ロボット・産業機器の世界でひとつの基準値として扱われることが多い。なぜかを2桁に分解して確認する。
6
防塵等級 6(耐塵形)
砂・粉塵が完全に侵入しないレベル。農地・建設現場・砂漠など粉塵が常に舞う環境でも内部回路を守る。
5
防水等級 5(防噴流形)
あらゆる方向からのホース噴射に耐える。屋外の雨や洗浄作業に対応。ただし水中への没水は対象外だ。
IP65は完全防塵+防噴流水を両立する等級だ。粉塵が多い屋外環境やホース洗浄を想定する機器に広く採用されている。ただし「IP65=どんな屋外でも大丈夫」ではない。飛沫・小雨程度の環境であればIP54でも機能するし、水辺では65では不足する。大事なのは使う環境と数字を照合しておくことが重要だ。
4. よく使われるIPコードの比較表
用途ごとに頻出するIPコードをまとめた。機器選定・仕様策定の際の参照用に使ってほしい。
| IPコード | 防塵 | 防水 | 代表的な用途 |
|---|---|---|---|
| IP54 | 粉塵侵入を制限 | あらゆる方向の飛沫 | 屋外ロボット(軽粉塵・雨天飛沫対応)、工場機器 |
| IP55 | 粉塵侵入を制限 | あらゆる方向の噴流水 | 屋外対応センサー、軽作業ロボット |
| IP65 | 完全防塵 | あらゆる方向の噴流水 | 屋外クローラロボット、産業機器(完全防塵+ホース洗浄対応) |
| IP67 | 完全防塵 | 水中1m・30分 | 水辺での調査ロボット、水中センサー |
| IP68 | 完全防塵 | 連続水中使用 | 水中ドローン、防水スマートフォン |
※各等級は下位等級の条件を含む(例:IP67はIP65の条件もクリアしている)
5. 屋外ロボット・産業機器に求められるIP等級の考え方
CuboRexはクローラロボットを農地・建設現場・山間部・水害現場と、ありとあらゆる不整地に持ち込んできた。その経験から言えることがある。IP等級の選択ミスは、思いのほか早く、思いのほか高くつく。
農地・建設現場の粉塵
耕作地や土工事現場では細かい土埃が常に舞っている。防塵等級5以上、できれば6がないと、基板やモータドライバが短期間で故障する。「多少の粉塵なら大丈夫」は通用しない現場だ。
雨天・悪天候での運用
農業も建設も、晴天だけで作業できない。小雨・飛沫程度ならIP54で対応できるが、より激しい降雨やホース洗浄を想定するならIP65以上を選ぶべきだ。「念のためIP65」は過剰ではない。
洗浄・メンテナンス方法
泥だらけになった機器をどう洗うかによって必要な等級が変わる。濡れ布巾や軽い水洗いならIP54でも耐えるが、ホース直射でさっと流すならIP65以上が必要だ。メンテナンス方法を先に決めてからIP等級を決めるという順番もある。
コストと性能のバランス
IP等級が上がるほど封止設計や材料コストが増加する。過剰スペックはコスト増になるが、不足は現場での故障コストになる。どちらも損だ。用途と環境に必要十分なレベルを選ぶことが、開発コストと運用信頼性の両立につながる。
まとめ
IPコードは、現場に機器を持ち込む前に確認すべき最低限の指標だ。
私たちは不整地の現場でロボットが壊れる理由を、ずっと追い続けてきた。電気系統のトラブルの多くは、設計段階でのIP等級の見立て違いに端を発している。現場で「CRAWL YOUR FIELD」を体現するには、機器が環境に耐えることが前提だ。
- IPコードはIEC規格に基づく防塵・防水性能の国際的な共通指標
- IP65は「完全防塵(6)+防噴流水(5)」を意味する
- 使用環境(粉塵・雨・洗浄方法)に合わせて必要な等級を選ぶことが、コストと信頼性の両立につながる
- 水中使用が必要ならIP67以上、高圧洗浄機での洗浄が必要ならIP69Kが必要


