地中のインフラ点検や行方不明者の発見に実用化!地中レーダー自動探索ロボット、人が入りづらい場所の足回りにCuGoを活用

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はじめに

地中レーダー探索機を長年開発されている仙台高等専門学校・知能エレクトロニクス工学科・教授園田潤。これまでレーダーを利用して、人が入りづらい地中探索の効率化を進めるため、様々なロボットを作ってこられました。現在開発を進める地中レーダーを自動走行化させるため、CuGo導入に至った背景、導入時に感じた点や使い心地、今後の展望についてお話お伺いしました。

仙台高等専門学校・知能エレクトロニクス工学科園田潤教授

CuGo活用ロボット開発の背景

CuGoを活用して開発したのは、地中レーダーを搭載した自動走行型無限軌道付き探索ロボットです。 CuGoは他に海ゴミ回収ロボットのプロトタイプでも利用しました。地中レーダー自動探索ロボットは現在は人が入れない場所のインフラ点検でも活用を目指していますが、開発したそもそものきっかけは、2011年の東日本大震災による行方不明者の地中探索でした。

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震災後探すべき所は探しつくしたと思われていましたが、2013年2月に未着手だった砂浜の一斉捜索が行われました。その際、地上は人の目で探すことができるものの、もしかしたら地中にまだ埋まっているのではないかと思われたんです。

レーダーであれば地中でも判断がつきます。人の目で探す必要がなく、探したい場所を全て掘らなくても、不明者の発見の確率が上がると考えました。

こうして地中レーダーを捜索活動に利用するプロジェクトが始まりました。これまで地中レーダーは何があるか、ないかしか判断ができず、何かあった場合はその物体を人の目で見て、それが何なのかを判読していました。この物体の自動識別化が私の研究分野です。

自動識別が実用化の段階に至り、まず地中レーダーを人が牽引して動かす形で砂浜の地中探索を開始しました。ですが、探索したい場所は広域に渡り、人力でレーダーを動かすのは途方もない作業で効率が上がりません。

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2016年頃には人に頼らずに探索出来ないかとレーダーの自走化を目指して車輪を探し始め、最初はラジコンキットを解体して、車輪の部分だけを取り外し、レーダーを載せた台車に取り付けました。

車輪を取付け、自己位置を測位して自動走行するようにはなったものの、車輪で砂浜を走るのは難しく、砂浜のような凸凹のある不整地でも安定して自動走行してくれる足回りはないかと考えはじめました。そんな時高専の卒業生が「こんな良いものがあります」と教えてくれたのがCuGoです。

CuGoの導入に至った理由

探していた不整地向けクローラとして走行性が高いこと、電動式であることと、すぐ使える導入のしやすさからすぐ導入を決定しました。

載せたいレーダーは重さ3kg程度と軽いので耐荷重は必要ありませんでしたが、砂浜などの広大な不整地を安定してパワフルに走れる走行性が必須でした。CuGoの動画を見ると非常に技術力が高く、安定して走りそうだという安心感がありました。

砂浜をテスト走行中の地中レーダー探索ロボット

動力について最初はクローラで主流のエンジン式の物も検討していたのですが、電動は制御がしやすく、軽く、かつサステナブルでもあり、電動を選びました。

またアルミフレームの取付だけという導入のしやすさから、取付期間の短縮ができること、取付時もカスタマイズが好きなようにできそうだったことも決め手となりました。

CuGoを取付た地中レーダー探索機

CuGo導入時に感じた点

納品1ヶ月後には十分安定して走る状態になっていました。以前のようにラジコンキットを分解、車輪をパーツ化し、その後台車に合うように取付パーツを自作し、取付けるという工程がなく、CuGoはとても組み付けられやすい構造で短時間で取り付けが完了しました。

取り付け時に工夫したのは、レーダーの取付位置です。地中レーダーは下に向かって信号を送受信するため、レーダーと地面の間には遮断するものがなく、かつ凸凹を乗り越えて走っても、レーダーがきちんと上下して信号を捉えられることができるようにする必要があります。このため、CuGo2台の間にレーダーをはさむ構造にしました。

CuGoの間にレーダーを取付。この取付方でも安定して走行

CuGoの上に台を付け、その上に載せたいものを載せるといった構造ではなく、こういった取付の方法でもレーダーの送受信に全く問題はなく、とても満足しています。

CuGo導入後の効果

テスト走行は砂浜、草むらの上、アスファルトの上、色んなところでかなりの時間過酷なテストをしました。

走行性は非常に高く、スムーズに動いてくれます。自動走行のアルゴリズムに正確に対応できる直進性、転倒もしない安定性があります。

アスファルト、砂浜、草むらなどで過酷なテスト走行を実施

また海沿いの砂浜で動かしても故障せずに動き、耐久性の高さも実感しています。砂浜ではギアに多少砂が噛むこともありましたが、その点は現地で修正して頂きだいぶ良くなりました。

行方不明者の探索用として実用化しましたが、地中レーダー自動探索ロボットはインフラ点検にも十分活用可能ます。

行方不明者の探索用として実用化しましたが、地中レーダー自動探索ロボットはインフラ点検にも十分活用可能ます。

これまでインフラの点検は道路など車が走れる場所であれば、車にレーダーを載せて走らせることで点検をしていましたが、車が入れない場所は専門家が目視で点検していました。車が入れない場所は、たとえば堤防など足場が悪い場所も多くあります。

人が入れない堤防などのインフラ点検に期待

地中レーダー自動探索ロボットにより、堤防のゆるみを見つけたり、空洞を見つけたりといったことに活用でき、安全で制度の高い点検が可能になります。現在仙台エリアで実用化のお話が進んでいます。

行方不明者探索とインフラ点検のどちらでも長時間稼働が将来的には必要です。現時点ではバッテリー1個だけでテスト中ですが、バッテリー1個で2時間稼働でき、今後はバッテリーを増強して長時間稼働をさせる予定です。重いバッテリーでも搭載できる耐荷重で全く問題がないと思っています。

製品は2021年1月にCuGo V2を最初に購入し、その後すぐに研究のためにV1とV3も追加購入しました。V3は構造的に改善され、改善に満足しています。

CuGoの活用で今後目指したいこと

地中レーダー自動探索ロボットのインフラ点検での実用化が目下の目標です。また、2020年の10月にプロジェクトを立ち上げた海ゴミ回収ロボットもプロトタイプ段階にあり、実用化を目指したいと思っています。

海ゴミ回収プロジェクトでの活用も視野

さらに、東日本エリアでの行方不明者探索を継続しながら、他にも過去災害があった場所での探索も始められたらと思っています。このような災害が発生しないことを祈っていますが、今後たとえば噴火災害などがあった場合など、人が入れない緊急時もすぐに調査できるロボットとして活用できたらと考えています。

噴火災害などの緊急時にも応用可能

CuGoの軽量化が実現すれば、山の険しい場所など人が手で機械を持って入る必要がある場所にも持っていきやすくなり、さらに活用の範囲が広がると思います。

CuGoの技術力の高さは大変感心しており、さらに産業ロボットの活用の幅が広がっていくと思います。今後の開発にさらに期待しています。

ありがとうございました!

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