【事例紹介03】GPS・QZSSロボットカーコンテストにCuGo使用ロボ出場

事例紹介CuGo

はじめに

GPS・QZSSロボットカーコンテストの実行委員長を務める熊本高等専門学校拠点化プロジェクト系入江博樹教授がCuGoを活用してロボットカーを開発した背景、導入時に感じた点や使い心地、今後の展望についてお話をお伺いしました。

CuGo活用ロボット開発の背景

まず、GPS・QZSSロボットカーコンテストについてですが、16年前ほどから測位技術の基礎技術の修得機会の提供及び技術交流会を目的として開催をしているコンテストです。競技内容はGPS・QZSSから位置情報を取得する自律走行ロボットカーを開発し、そのロボットカーを走行させて得られるポイントを競うもので、毎年ロボット開発を専門にする学生や社会人によって構成されたチームが多数参加しています。

熊本高等専門学校 拠点化プロジェクト系 入江博樹教授

15年前では現実的でなかった自動運転や人やモノにGPSをつける動体観測も実用化できる時代になり、GPS・QZSSはこれからも広く期待される分野です。しかし測位技術が普及する上で技術者間では「GPS受信機はロボットに使いにくい」という課題がよく言われていました。この理由は、データを取得していざ活用しようとしても「GPSのデータが独特の方式で構成されているため、どのデータが緯度経度か分からない」という問題です。具体的には、度と分が小数点がわけられていないので判断できないことが一番の問題でした。この問題から、GPSの教育をしていかないと技術普及に至らないと考え、失敗してもいい機会を与える技術者交流の場としてGPS・QZSSロボットカーコンテストをはじめたという経緯があります。コンテストでは積極的に新しい技術やパーツを紹介しており、CuGoは取り付けるだけでよい「キャタピラ型」の足回りパーツとして画期的で汎用性が高いと思い、活用を決めました。

CuGoの導入に至った理由

コンテスト自体は整地された平地で行うため、不整地向けのパーツである必要は必ずしもありませんでしたが、GPSデータを活用してロボットを動かすにあたって、クローラは超信地旋回(その場で回転)できることがメリットでした。

タイヤ型の場合は角度を経路設計して旋回するのに対し、その場で回転できるクローラは方向転換がしやすいです。最小半径で回れるので、小回りが効くというのはスピード向上に重要でした。

CuGoV3 熊本高専バージョン 阿蘇不知火R-3号

また、クローラではGPSの誤差の見える化で測位性能を向上させることが可能です。GPSデータでロボットを動かす場合の方法は2つあります。1つめは定点測位(固定したポイント)で、2つめは動いたポイントで動いたものを測位する方法です。GPSはGPSを活用して動かすその動体が動いた時の評価が難しく、動いていると、正しい位置が計測しづらくなります。つまりロボットが動くことで誤差が発生しますが、クローラの場合はその場で方向転換できるため、誤差の見える化に使いやすいことが精度向上に重要でした。

また個人的な話ですが小学校の頃から戦車に興味があって戦車の本をボロボロになるまで読んでいました。プラモデルやタミヤのキットなどもよく組み立てていたこともありクローラにはロマンを感じます。CuGoのことを知った際に、機会を見つけてぜひ一度使ってみたいと思っていました。

CuGoの導入時に感じた点

私がこのコンテスト用に製作したロボットカーは、市販のラジコンカーをベースにドローンのフライトコントローラーとGPS受信機を搭載して走らせていました。CuGo遠隔操作キットもラジコンでコントロールできる方式だったので、以前のロボットカーから簡単にコンバートできました。追加で製作したのは、ステアリングからクローラへ対応するために、DMC(Dual Motor Controller)をArduino UNOで自作しました。後で分かったのですが、フライトコントローラの設定がクローラにも対応していたので、DMCを作らなくても良かったです。CuGoはドローンのフライトコントローラとも相性がいいことがわかりました。

その他工夫した点としては、コンテストの規定から機内持ち込みサイズにしました。モジュールが分離できるので、ばらして、また組み立て移動できるのは大変楽です。クローラタイプのロボットをばらすことができるという発想はなかなかないので、良くできた設計だと思います。

他にはメンテナンス台と移動用にキャリアーを作成しました。メンテナンス台は、研究室で、モーターの動作実験の際に、クローラを持ち上げた状態で動かしてみたいと思ったことから作成しました。ちょうどクローラの部分が浮くようにして作成しており、走行後のメンテナンスにも便利です。キャリアーはキャンプ用の荷物運びのハンドキャリーを流用しました。ロボットを移動させるときに、腰に負担をかけず安心して持ち運びができるようになりました。

CuGo導入後の効果

テスト走行してみて、直進走行の安定性、パワフルさ、また上からの荷重が不安なくかけられる点を感じました。クローラは履帯を張って常に緩みがでないようにしないとスムーズに走行できませんが、この点がよく作られていると感じました。

実際のコンテストでも上手く走行してくれました。学生やその他の技術者達も興味津々で見てくれ、新しい技術の紹介としてとても良かったと思っています。

CuGoの活用で今後目指したい事

GPSの活用はオープンスカイの道路上で様々な研究が先行して進んでいます。しかしGPSはたとえば田んぼや災害地など目印や道がなく、与えられた情報が緯度経度だけの場所でも活用可能です。このような場所は人が入りづらい不整地の場所が多いため、ロボットで代替してほしいというニーズは多様にあります。このような場所でのロボットの足回りは走破性の高いクローラであることが必須になってきます。

今、日本版GPSと呼ばれる「準天頂衛星みちびき」が打ち上げられ、海や山など人がいない場所でも、高精度な測位情報取得が可能になってきています。高精度な測位を活用したクローラタイプのロボットが様々なシーンで活用できれば、人にとって大変で危険な作業もどんどん代替を進められると思い、CuGoをテスト機として、様々な要望に応えていけたらと思っています。

今後はGPSの制御だけででなく、どこを通ったかの経路測定もしたいと思います。たとえば、農業ロボットにGPSを取り付け、農薬や肥料を巻いたかを測ることも可能です、作業する時にモーターがON ・OFFになった時に記録を取るだけでもエビデンスにすることができます。

また、クローラを利用することで、GPSの誤差の見える化が可能なことについてお伝えしました。CuGo活用にあたっては、GPS受信機には様々な種類があるので、他の受信機に色々と変えて走らせてみたいと思っています。(GPS受信機からの位置情報を出力する際には、利用形態に合わせて最適化する操作(適応フィルタ)が入っていることがあります。そのため、カーナビ用途と歩行者支援用途では、若干の違いがみられる時があります。たとえば、カーナビ用にはトンネルや橋の下を通過するときには、前の時速で推定して位置を出力します。歩行者用は急に止まったり、歩いたりと細かい挙動にも対応しています。CuGoの利用には、受信機の適応フィルタとしてどのような処理が適しているかを検討することで、さらに位置の精度が高められると考えています)

CuBoRex社への要望としては、防水性・防塵性の向上、メンテナンス(掃除のしやすさ)、急角度にも対応可能なクローラの開発です。直近、竹林や杉の植林地などの不整地で、伐採した後の不整地に入って草刈りなどができるロボットを作って欲しいという要望があります。しかし斜面は45度近くなるところもあるようで、CuGoがこの急角度に対応できるようアップデートされることを期待しています。

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