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コラム

2024.11.18

クローラ(無限軌道)とは? 現場で「使えるクローラ」の選び方と導入事例

はじめに:足回りの開発に時間を取られていませんか?

 

ロボットを作る人なら一度は経験するはずです。

「センサーもアルゴリズムも固まってきたのに、足回りの設計だけで数ヶ月が過ぎていく」という状況を。

特に屋外や農地、工場の隅、橋梁の桁下など、地面が整っていない場所で動くロボットを開発するとき、足回りの選択は機体の性能そのものを左右します。

試作してみたら想定より段差を乗り越えられなかった、ぬかるみにはまって動けなくなった——そういった問題が後から出てくると、設計の根本から見直すことになります。

 

この記事では、不整地走行の代表的な選択肢であるクローラ(無限軌道)の仕組みと特性を解説し、CuboRexのクローラユニット「CuGoシリーズ」を使った開発事例もあわせてご紹介します。

足回りの選定で迷っている方の参考になれば幸いです。

 

 

クローラ(無限軌道)とは?

 

 

クローラとは、車輪の代わりに帯状のベルト(履帯)を使って走行する装置のことです。起動輪・転輪・誘導輪にベルトをかけ渡し、起動輪を動力で回すことで前進・後退します。「無限軌道」とも呼ばれ、建設機械や農業機械、軍用車両など、過酷な地形で使われる機械に古くから採用されてきた方式です。

車輪との最も大きな違いは、地面との接触の仕方にあります。

車輪は基本的に1点(または数点)で地面に接します。それに対してクローラは、履帯が地面に沿って面で接地します。この違いが、不整地走行性能に直結します。

 

なぜクローラは悪路に強いのか

 

接地圧が低い

重量が履帯全体に分散されるため、1点あたりの地面への圧力(接地圧)が低くなります。柔らかい土や砂、雪の上でも沈みにくく、スタックしにくいのはこのためです。

 

地形に追従する

凹凸のある地面では、履帯が地形の形状に合わせてたわみながら接地し続けます。車輪型では片輪が浮いてしまうような段差や溝でも、クローラはベルトが地面を捉えたまま前進できます。

 

段差乗り越え能力が高い

転輪の直径と配置によって決まりますが、CuGoシリーズの場合、最大9cmの段差を乗り越えることができます。屋外の縁石・扉のレール・畦道の畝など、日常的に出てくる段差に対してマージンを持って設計されています。

 

クローラの種類:ゴムと鉄の使い分け

 

クローラの履帯素材は大きくゴム製鉄製に分かれます。

ゴムクローラは、振動が少なく静音性が高いのが特徴です。アスファルトやコンクリートの上を走っても路面を傷つけません。工場内・農地・舗装された屋外通路など、多くの現場環境に対応できます。CuGoシリーズはこのゴム履帯を採用しています。

 

鉄クローラは耐久性と走破性がゴムを上回ります。岩場や鉄くずが散乱するような過酷な環境では頼りになりますが、舗装路面を傷つけるリスクがあり、振動・騒音も大きくなります。

 

ロボット開発の文脈では、ゴムクローラが現実的な選択になるケースがほとんどです。農地・現場・屋内外の往来など、多様な地面を想定するならゴム履帯で対応できます。鉄クローラが必要になるのは、採掘現場や瓦礫の上を走らせるような、より特殊な用途です。

 

CuGoシリーズとは:足回りの開発期間を短縮するクローラユニット

CuboRexが提供する「CuGoシリーズ」は、ロボット開発者がクローラ駆動の機体を短期間で試作・開発するために設計されたユニット製品です。

 

通常、クローラ機構をゼロから設計しようとすると、履帯の選定・フレーム設計・モーターとの接続・制御系の構築まで含めて、数ヶ月から半年以上かかることが珍しくありません。CuGoシリーズは、その足回りの部分をユニット化したもので、2ユニットを左右に取り付けてフレームを組めば、クローラ走行の試作機が短期間で立ち上げられます。

 

汎用的なアルミフレームの採用により、LiDAR・カメラ・ロボットアーム・PCなどの搭載機器を穴あけ加工なしで取り付けられる拡張性の高さも特徴です。

 

CuGoシリーズ 仕様比較

 

3モデルは積載重量・用途・開発スタイルによって使い分けます。

仕様 CuGo V3 CuGo V4 CuGoMEGA M2
積載重量 80kg 80kg 350kg
ユニット重量 5.7kg 10kg 約30kg
最高速度 3.5km/h 1.8km/h 1.2km/h
防塵・防水等級 IP4X相当 IP65相当 IP64相当
乗り越え段差 9cm 9cm 16cm
最大登坂角度 20度 20度 20度
搭載モーター ブラシ付きDC(45W) ブラシレスDC(100W) ブラシレスDC(400W)
サスペンション なし ボギー式 なし
通信インターフェース RC信号(PWM) USB・TTLシリアル RC信号・RS232・CAN-bus
プログラム制御 △(外部制御要) ◎(ROS2対応)
電源電圧 24V 48V

 

各モデルの位置づけをひと言で整理すると以下のとおりです。

 

CuGo V3は2ユニット合計11.4kgという軽量ボディが特徴の入門モデルです。

最高速度3.5km/hと3モデルの中で最も機動性が高く、コスト面でも手が届きやすいため試作・研究・個人開発での採用が多いモデルです。防水等級はIP4X相当のため、水がかかる屋外環境での長時間使用には注意が必要です。

 

CuGo V4はブラシレスDCモーターへの変更でトルクが向上し、ボギー式サスペンションが凹凸走行時の振動を吸収します。IP65相当の防水性能により雨天の屋外でも使用可能。USB・TTLシリアルによるPC制御とROS2対応により、自律走行の開発環境として最もバランスが取れたスタンダードモデルです。

 

CuGoMEGA M2は350kg積載に対応するヘビーデューティモデルです。

段差乗り越え16cmと3モデル最大の走破性を持ち、農業・建設・災害対応など重量物を扱う本格的な現場用途を想定しています。RS232・CAN-bus対応により産業用機器との接続も視野に入ります。

 

足回り選びの判断軸

 

クローラを選ぶかどうかは、以下の3点で判断できます。

 

① 走行環境の地面状態 段差・傾斜・軟弱地盤・ぬかるみ・砂利・草地のいずれかが含まれる場合、クローラが有力な選択肢になります。完全にフラットで整備されたフロアのみを走行するなら、小回りが利く車輪型の方がシンプルです。

 

② 想定する段差高さ 段差5cm以下なら大径車輪で対応できるケースもあります。それ以上、特に10cm前後の段差が想定される場合はクローラが安心です。重量物搬送で大きな段差が想定されるならMEGA M2の16cmが基準になります。

 

③ 開発のスピードと制御の自由度 クローラ機構を自前で設計すると開発リソースが足回りに集中してしまいます。センサー・ソフトウェア・アプリケーション層に集中したい場合、ユニット化されたCuGoシリーズを使うことで足回りの開発工数を大幅に削減できます。ROS2環境で開発を進めたい場合はV4が標準選択です。

 

導入事例

 

CuGoシリーズの柔軟なカスタマイズ性を活かして、様々な分野のロボットが開発されています。

 


 

① 小型橋梁点検ロボット / 株式会社ジビル調査設計様(CuGo V4)

 

老朽化した橋の桁下や狭い水路に遠隔操作で潜入し、マルチカメラで撮影した画像から3Dモデルを作成するロボットです。高さ60〜70cmの桁下という人が這いつくばってもまともに作業できない環境で、IP65防水性能と自在なフレーム設計が決め手になりました。展示会でCuGoを知ってから購入・完成・現場投入まで1年以内を実現。2名体制だった点検作業を1名でも実施できるようになり、撮影精度の向上でデータの二次利用価値も上がったと評価いただいています。

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② ブドウ収穫サポートロボット TANG / 個人ユーザー様(CuGo V3)

 

農家出身のエンジニアと農業ロボット専門のソフトウェアエンジニアが共同開発した、ブドウ収穫カゴの自動追従ロボットです。デプスカメラで作業者を認識し、重いカゴを持ちながら低い姿勢で移動し続ける重労働を代替します。ブドウ畑特有の軟らかく凹凸のある土でも安定走行でき、「これはあると便利だ」という現場の農家からの評価を得ています。軽量・低コストなV3を選んだことで、個人開発の予算内でのロボット完成を実現しました。

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③ 山岳救助ミッション対応ロボット / 東京大学 海津研究室(CuGo MEGA)

 

Japan Innovation Challenge 2025において、岩場・急斜面・瓦礫が混在する山岳環境での救助ミッションに挑んだロボットです。過酷な条件下での連続稼働に耐える足回りとして「壊れない」信頼性が選定の決め手となりました。高負荷・長時間使用という条件において、CuGo MEGAのブラシレスDCモーターと大型クローラが安定した走行を支えています。

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まとめ:クローラが必要かどうかは「地面」で決まる

 

クローラを選ぶかどうかの判断はシンプルです。

ロボットを動かす地面が、本当にフラットかどうか——それだけです。

整備された研究室や倉庫内だけを走るなら、車輪型の方が小回りが利いて制御も簡単です。しかし屋外・農地・点検現場のように、段差・傾斜・軟弱地盤が混在する環境を想定するなら、クローラは最初から設計に組み込んでおく方が結果的に開発が早く進みます。

CuGoシリーズは「まず走らせてみる」段階から使い始められます。単体ユニットから購入・評価できるため、足回りの選定で迷っている段階でも試しやすい設計です。

 

現場の写真や機体の概要を送っていただければ、用途に合ったモデルを一緒に検討します。

まずはお気軽にご相談ください。

 

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本記事について 本記事はCuboRex製品開発チームが自社製品の設計・開発・導入支援の実務経験をもとに執筆しています。記載の仕様は各製品ページの公式情報に基づいています。

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