日本の面積の70%に当たる「森林」と人が暮らしている「人里」の境界線にある「里山」。この緩衝地帯があるからこそ、野生動物が人里におりてきて田畑を荒らしたりすることを防いだり、台風や集中豪雨という自然災害による土砂崩れ等から人間を守ってくれる役割を果たしています。しかし、近年、「里山」は減少傾向にあり、その保全が大きな問題になっております。減少傾向にある理由として「人不足」が挙げられます。かつての人里は森林を管理する「林業」と野生動物を管理する「猟師」によって環境保全されていました。しかし、高齢化や後継問題、人が里山という緩衝地帯に入り関わることが減ったことが主な原因となっています。また最小規模でも1万平方メートル、中には数十平方メートルにもなる広さの里山を少ない人数で調査するのは時間も費用もかかり、保全にも限界があるという課題もあります。そんな現状の中、早稲田大学の学生である佐島さんと小島さんは、里山の調査および管理をロボットを使うことで解決しようとしています。今回、お2人からお話を伺う機会があり、取材させていただきました。

深い森の中を駆け抜ける走破性を持つCuGoはデータ取得に最適
佐島さん達が目指したロボットは、今まで人の手をかけていた調査をロボットが代替えすること。深い森の中をカメラをつけたロボットが走行し、環境の変化や状況をパソコンのデータに自動で読み込ませ管理を効率化できるようにすることでした。最初に作られたロボットは手製の角ばった車輪を足回りに用いたものでした。しかし、いざ森の中で走らせたところ、ガタガタと大きく振動し、森の中にある斜面を上手く登ることができず、いいデータを取ることが難しい問題に直面しました。
この問題を解決すべく走破性の高く、安定した画像データを取れる足回りがないか調べていた時、以前研究室にいた先輩から「CuGo」の存在を知り採用に踏み切られたそうです。その結果、深い森の中で傾斜地や不整地を走行し、里山の調査管理をすることができるロボットが誕生しました。
スマートフォンで簡単に遠隔操作可能

完成した調査ロボットは大学の構内や東京都の緑地保全地域の森で実際に走らせ調査を行いました。操作に関しては佐島さんが独自にスマートフォンの操作で、できるようになりました。また、広大な森を調査することからも視野にいれた開発で、基地局さえ作ればたとえ地球の反対側からでも操作が可能にし、またスマートフォンから景色を見ながら操作することもできるように仕上げました。

自律走行化し、自治体の里山保全に尽力できるものを目指す
現状は遠隔操作ロボットで、調査データを取得するロボットです。しかし、佐島さん達の最終ゴールは自動で里山の中を走行し、データをロボットが持ち帰ることができる「自律環境モニタリングロボット」それが完成した暁には今まで人不足で調査管理が行き届かなかった里山がキチンと環境保全されるようになります。かつて、野生動物や自然災害の防波堤として私たちを守ってくれた里山が人間の生活を守ってくれるようになると期待を膨らませております。今まで里山保全に悩む自治体様のパートナーとしてロボットが当たり前のように導入される未来は、そう遠くないかもしれません。