活用事例
2025.12.12
【CuGoMEGA導入事例】東京大学 海津研究室|「壊れない足回り」が過酷な山岳救助ミッション達成の鍵。Japan Innovation Challenge 2025 挑戦の裏側

農業機械のロボット化や自動運転を研究する東京大学大学院 農学生命科学研究科の海津 裕(かいづ ゆたか)教授の研究室チームが、山間部での遭難救助コンテスト「Japan Innovation Challenge 2025」において、見事「Mission 3(救助)」をクリアしました。
今回、海津教授の研究室にお邪魔し、過酷な山岳フィールドでのロボット運用になぜCuboRexの移動ロボットプラットフォームが選ばれたのか、そして従来モデル「CuGoMEGA」での実証を経て、現在は発売中の後継機「CuGoMEGA M2」を手掛けたエンジニア糸井との技術対談を通じて、フィールドロボティクスの最前線に迫ります。
プロフィール

東京大学大学院 農学生命科学研究科 教授 海津 裕 先生(写真右)
農業機械のロボット化、画像処理、GPS応用計測、生物生産ロボットなどを専門とし、スマート農業の実現に向けた研究を牽引。今回は研究室の学生チームを率いてコンテストに参加。
株式会社CuboRex エンジニア 糸井雄祐(写真左)
クローラ型ロボットプラットフォーム「CuGoMEGA M2」の開発リードエンジニア。
挑戦:賞金2000万円の山岳救助コンテスト「Japan Innovation Challenge」
ミッション達成時の研究室メンバーの皆さん
手前が「CuGoMEGA」を用いた搬送機
――まずは、コンテスト参加のきっかけとミッション内容について教えてください。
海津先生: 大きな動機は、研究をさらに加速させるための「資金獲得」ですね(笑)。2000万円という規模の支援があれば、より高度な開発や実験に挑戦できます。自分たちが培ってきた農業ロボットのノウハウが、過酷な救助現場で通用することを証明し、その成果を次の研究に繋げたい。そう考えて挑戦を始め、今回で4回目になります。
コンテストの課題は山間部での遭難者救助です。ドローンなどで遭難者を発見し、実際に現場へ駆けつけて救助(搬送)するという内容です。私たちは今回、最も難易度が高いとされる「Mission 3(救助)」を達成しました。
導入の経緯:自作ロボットの限界と「CuGoMEGA」への転換
――これまでの挑戦ではどのようなロボットを使われていたのですか?
海津先生: 最初はラジコンで動く大きなトラクターを使ったりしていましたが、山道での運用は困難でした。そこで、以前からCuboRexさんの小型クローラユニット(CuGo V3など)を使って自作していた経緯もあり、今回はより大型で可搬重量のある「CuGoMEGA(従来モデル)」を採用することにしました。
――「CuGoMEGA」を選定された決め手は何でしたか?
海津先生: 最大の理由は「重い物を運べること」と「壊れないこと」です。 今回のミッションでは、50kgあるダミー人形(遭難者役)を搬送しなければなりません。以前使っていた小型ユニットではパワー不足でしたが、CuGoMEGAなら十分な積載能力があります。
そして何より、現場でトラブルが起きない信頼性です。 山の中の林道は、溝があったり岩が転がっていたりと非常に荒れています。他チームのロボットを見ていると、旋回時にゴムクローラが外れて動けなくなるケースが非常に多いんです。しかし、CuGoMEGAは一度もクローラが外れることもなく、メカ的なトラブルは皆無でした。これは本当にすごいことです。
技術対談:エンジニア糸井 × 海津教授
CuGoMEGAを搭載した実験機の数々
〜「CuGoMEGA」の実績と、進化した「CuGoMEGA M2」の可能性〜
インタビューには、CuGoMEGAの後継機として現在発売されている「CuGo MEGA M2」のエンジニア・糸井も同席。開発者視点で、さらに深い議論が交わされました。
糸井(CuboRex): 今回、CuGoMEGAを使っていただいて「壊れなかった」という評価は開発者として非常に嬉しいです。実際の走行性能はいかがでしたか?
海津先生: 非常に安定していましたね。林道には雨水が流れるための「切り(溝)」があり、そこを乗り越える際の衝撃や負荷はかなりのものです。でもCuGoMEGAは何の問題もなく走破してくれました。 あと、我々のチームはCuGoMEGA(搬送担当)とは別に、もう一台「ショベルカー型のロボット」も投入しました。
糸井: ショベルカーとCuGoMEGAの連携プレーですね。
海津先生: そうです。50kgのダミー人形を人間が持ち上げるのは重労働なので、ショベルカー型ロボットのアームで人形を吊り上げ、CuGoMEGAの荷台に乗せるという作戦です。CuGoMEGAが搬送に専念できるプラットフォームだったからこそ実現できた連携です。
糸井: 先生が今回使用されたCuGoMEGAの堅牢性はそのままに、後継機の「CuGoMEGA M2」ではモーターをブラシレス化し、さらなる制御性の向上を実現しました。先生の研究用途だと、こうした進化はどう響きますか?
海津先生: ブラシレス化はいいですね。やはり低速時のトルク制御や、より細かな速度制御ができると、不整地での走破性はさらに上がります。 また、今回のコンテストでは「遠隔操作」が一番の壁でした。現場から1km離れた本部から操作するのですが、山の起伏で通信が切れやすい。操縦側、ロボット側ともに携帯回線では遅延が避けられないため、操縦側は安定した通信を確保するため、Starlink(スターリンク)を採用しました。
糸井: Starlinkでの運用だったんですね!
海津先生: ええ。携帯電波も入らない場所があるので、衛星通信は必須でした。ただ、それでもカメラ映像の画質は荒くなるので、デコボコ道の遠近感がつかみにくい。そこでステレオカメラを搭載し、操縦者が3Dゴーグルで立体視できるシステムを構築しました。 こうした高度なセンシングや通信機器を積んでも、CuGoMEGAならペイロードに余裕があるので助かります。

遠隔操作での操縦の様子
成果と今後の展望
――今回の成功の要因を一言で言うと?
海津先生: 「足回りの心配をしなくてよかったこと」に尽きます。 研究開発において、移動ロボットの「足回り」を作るのは非常に手間と時間がかかります。そこが既製品として信頼できるレベルで完成されているプラットフォームがあったからこそ、我々は上位のシステム(遠隔操作、通信、アーム制御など)に注力できました。
結果として、崖崩れで道がなくなっているような想定外の事態でも、落ち着いて迂回路を探し、ミッションを完遂することができました。
――最後に、今後のロボット開発への期待をお聞かせください。
海津先生: 屋外フィールド、特に山間部や農業現場では、とにかく「タフであること」が最優先です。泥だらけになっても、段差があっても動き続ける。CuboRexさんには、CuGoMEGA M2を含め、これからもそんな「現場で使える」強い足回りを提供し続けてほしいですね。
【編集後記】 「クローラが外れない、壊れない」。 一見当たり前のことのようですが、極限のフィールドではその当たり前が勝敗を分けます。海津先生のチームが実証したCuGoMEGAの堅牢性は、現在発売中の後継機「CuGoMEGA M2」にも確実に受け継がれています。 ブラシレスモーターによる制御性の向上など、さらに進化したCuGoMEGA M2が、研究開発や現場の課題解決を加速させます。
取材協力: 東京大学 海津研究室
関連製品: CuGo MEGA M2(製品情報はこちら)


