活用事例
2026.01.19
【活用事例】土砂災害の最前線へ。未知の悪路を走破する「河道閉塞」対応ロボットの足回りに、なぜ『CuGo MEGA』が選ばれたのか?

活用事例
土砂災害の最前線へ。未知の悪路を走破する
「河道閉塞」対応ロボットの足回りに、
なぜ『CuGo MEGA』が選ばれたのか?
大阪工業大学 ロボティクス&デザイン工学部 ロボット工学科 リアルワールド・ロボティクス研究室
近年、豪雨災害などで頻発する「土砂崩れ」。山間部でせき止められた土砂や水が決壊し、甚大な被害をもたらす二次災害を防ぐため、危険な現場で活躍するロボットの研究が進められている。内閣府が主導する「ムーンショット型研究開発事業」の一環として、大阪工業大学の大須賀公一教授と片山貴仁さん(大阪大学大学院生)らのチームが開発した土砂災害対応ロボットシステムに、CuboRexの『CuGo MEGA』が採用された(出典:大阪工業大学 プレスリリース)。
「足回りの信頼性が、プロジェクトの成否を分ける」と語る大須賀教授らに、開発の背景とCuGo MEGA導入の決め手を聞いた。
1. 開発の背景:人が立ち入れない「決壊寸前」の現場へ
2050年の未来を見据えた、無人化施工への挑戦
研究室が取り組んでいるのは、人が近づけない極限環境において、ロボットだけでインフラ構築や災害対応を行うプロジェクトだ。2050年までに「自律的なロボット群によるインフラ構築」を目指すプロジェクトの一環であり、現在はその実証実験段階にある。
一刻を争う「河道閉塞(かどうへいそく)」への対応
今回ターゲットとしたのは、「河道閉塞(天然ダム)」の対応だ。土砂崩れによって川がせき止められ、水が溜まっていく状況は、いつ決壊してもおかしくない非常に危険な状態だ。
「一刻も早く水抜きをするための排水ポンプ車やホースを設置したい。しかし、地盤はぬかるみ、いつ崩れるかわからないため、重機も人も入れない。そんな現場に、小型のロボット群で道を切り開き、機材を搬送するシステムが必要です」
— 大須賀教授
2. システムの概要:分離・合体する「ロボット・コンテナ」構想
研究チームが開発したのは、必要な機能を「上部ユニット」として載せ替え可能な共同ロボットシステムだ。山間地帯の河道閉塞災害現場における遠隔での状況調査から排水作業までを一貫して行うことを主な目的としている。

システム構成
- 足回り:不整地を高い走破性で走破するクローラーユニット移動基体「CuGo MEGA」
- 上部ユニット:
- 排水ホース展張りロボット(河道閉塞現場で水を流し、水位上昇や土石流のリスクを抑制)
- 汎用移動体発車用カタパルト、偵察用双胴クローラーなど
- 運用方法:
- 複数の小型ロボットが連携し、コンテナリレーのように資材を最前線へ運ぶ
- 現場に応じて上部ユニットを合体・分離し、従来の大型建設機械が入れない現場で災害発生後の初期段階(1〜2週間)の応急復旧を遠隔操作で実現する
このシステムの根幹となる「足回り」として採用されたのが、高い走破性と製品としての信頼性が評価されたCuGo MEGAだった。
実証実験の様子
3. 導入の経緯:自作ロボットの限界と、既製品への転換
「足回りが壊れたら、実験は終わる」
プロジェクトを担当する大学院生の片山さんは、当初の苦労をこう振り返る。
「最初は足回りも自作していました。しかし、土砂災害を模した現場は、泥、水、岩が入り混じる過酷な環境です。自作のクローラーでは、負荷がかかるとチェーンが外れたり、モーターが焼き付いたりとトラブルが絶えませんでした」
— 片山さん
ロボット研究において、移動機構の故障は致命的だ。本来検証したい「群制御」や「作業アーム」の実験にたどり着く前に、移動トラブルの修理に時間を奪われる——それが現場の最大の課題だった。
決め手は「圧倒的な走破性」と「開発リソースの選択と集中」

白羽の矢が立ったのが、産業用クローラーユニット『CuGo MEGA』だ。
大須賀教授の評価
「ロボット研究において『足回り』を作るのは非常に労力がかかりますが、そこが研究の本質ではありません。『足回りはCuGo MEGAに任せれば絶対に動く』という安心感があれば、我々は上の脳みそ(制御や機構)の開発に集中できる。これが最大の採用理由です」
片山さんの評価
「九州大学の実験場(土砂災害を模したフィールド)での悪路走行試験において、CuGo MEGAは他の試作機が故障する中でも、長年にわたりほとんどメンテナンスなしで確実に動作し続け、産業用製品として、極めて高い信頼性を実証しました。我々が荒っぽい使い方をしても高い走破性を発揮するCuGo MEGAは、まさにシステムを支える『優等生』でした」
4. 実際の活用シーン:悪路をものともしないパフォーマンス
実証実験では、CuGo MEGAの上に独自開発した「汎用移動体発車用カタパルト」「偵察用双胴クローラー」「排水ホース展張りロボット」を搭載。ぬかるんだ斜面や瓦礫の山を乗り越え、目標地点まで正確に資材を運搬することに成功した。
特に評価されたポイントは以下の2点だ。
即戦力であること
届いてすぐに開発のベースとして使え、上部ユニットの取り付けも容易だ。
タフネスさ
泥・水・衝撃に対し、メンテナンスフリーに近い状態で稼働し続ける耐久性がある。
5. 今後の展望:自律移動による「群ロボット」の実現へ
現在は遠隔操作が主だが、今後はCuGo MEGAから得られるデータを活用し、完全自律移動の実現を目指している。
「現場の状況は刻一刻と変わります。ロボット自身が地形を判断し、複数台が連携して最短ルートで排水作業を完了させる。そんな未来の防災システムの実現に向け、CuGo MEGAは欠かせないパートナーです」
— 片山さん
編集後記
災害現場の過酷さは、ロボット研究における最大の障壁の一つだ。特に「河道閉塞」のような一刻を争うミッションでは、移動機構の故障は、検証すべき本質的な研究を停止させるだけでなく、二次災害を防ぐための作業遅延に直結する。
過酷な災害現場で「止まらないこと」が何より求められる中、CuGo MEGAは、研究チームが制御や群AI、独自の作業ユニットといった「ロボットの脳」の開発にリソースを集中できる「信頼のプラットフォーム」として選ばれた。この事例は、極限環境での技術開発において、土台となる足回りの信頼性がプロジェクトの成否を左右する重要な要素であることを示している。
プロフィール
大須賀 公一 教授
大阪工業大学 ロボティクス&デザイン工学部 ロボット工学科教授 / 大阪大学 名誉教授
制御工学、ロボット工学の権威。「受動歩行」や「陰的制御」の研究で知られる。「ムーンショット型研究開発事業」においては、課題推進者として災害対応ロボット(可変界ロボットシステムなど)の研究開発を主導している。
片山 貴仁さん
大阪大学 大学院 機械工学専攻 博士前期課程
本プロジェクトの実機開発・運用を担当。現場での泥臭い運用実験を通してシステムのブラッシュアップを行っている。
関連リンク
写真提供:大阪工業大学
この事例で使用された製品
大型クローラーロボットプラットフォーム
CuGoMEGA M2
積載350kg / IP64相当 / 段差16cm。過酷な不整地で確実に動き続ける産業用クローラーユニット。


