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2023.08.31

E-cat kit開発秘話 -電動化で切り拓く現場の未来-

一輪車(ねこぐるま)電動化キット E-cat kit

 

既存の手押し一輪車(ねこ車)を後付で電動化できるキット E-cat kit。

農家や建設現場で物資の運搬に利用される一輪車に、タイヤ交換をするように後付けすることで、重量物を楽に運べる「電動一輪車」に進化させることができる「後付けの動力内臓型タイヤキット」である。

 

 

一輪車と一口に言っても、地域や産業に合わせて数百種類の形が存在する。

その全てを電動に生まれ変わらせることができる。

 

会社のミッションは「現場のキツいをロボティクスで解消する」

E-cat kitはその通り運搬作業という現場の”キツい”をすぐに解消する製品だ。

 

各業界から「そのアイディアはなかった」「面白い!確かに利にかなっている」「一度使うと手放せない」と嬉しい反応が相次いでいるプロダクトはどのように生まれたのか。

 

考案者でもある株式会社CuboRex 代表取締役 嘉数がその背景を振り返る。

 

 

歩くのが嫌い、から生まれたアイディア

 

とにかく歩くのが嫌いだった。

地元の沖縄では高校3年間、自転車が主な移動手段だったが、通学の暑さに耐えかねていた。もっと便利に楽に移動できないかと考えた末、思いついたのが電動バイクだった。

 

物心ついた時から「自分で何かを作る」ということが好きだったが、インターネットで情報収集をするうちに、「電動バイクは自分で作れる」という情報と出会ってしまった。

自分で作れる、と知ったらやりたくなってしまったのだ。

 

 

当時は受験勉強で忙殺され完成は叶わなかったが、これが後の製品開発の礎となる。

 

その後大学進学で上京が決まり、東京は沖縄と違い、電車が便利に使えると聞いて期待していた。

しかし実態は学校や自宅、どこにいくにも駅から目的地までの徒歩の距離がとても長い。

暑い、汗をかく。電車の生活は便利ではない、と認識を改めた。

 

やはり乗り物がほしい。それも格段に楽な乗り物が。

 

そんな電車生活へのある種の期待はずれと、大学受験勉強が終わり時間ができたこともあり、製品開発熱が再燃。

東京で再び折りたたみ自転車とモーター、バッテリーを組み合わせて電動バイクの試作を始めた。電車移動との併用が可能なように、折りたためる電動バイクというコンセプトだった。

試作品を作る中でその便利さに事業化の可能性を見出し、東京都主催のビジネスコンテストにも出場。

最終的には出場者350人中2位という結果に。

 

 

 

しかし事業化を考えるほどに、法令の問題やビジネスモデルとして確立するハードルの高さなど、モビリティ事業の難しさを痛感。方向転換を決めた。

 

それでも、電動化という技術を軸になにか新しい可能性があると感じていた。

単純な例えだが、自転車にモーターとバッテリーがつけば電動バイクになる。

 

同じように、モーターとバッテリーによって既存の製品をアップデートすることで人の役に立つ。そんな何かを作りたかった。

 

 

一輪車を電動化しよう、と決めたきっかけ

 

さまざまな人とディスカッションを重ね、自身でも情報収集する中で「台車」「一輪車」「マウンテンバイク」など色々なアイディアが出た。

 

その中で一輪車に可能性を見出したのは、乗り物等と違い、最小構成で一つのタイヤを取り替えるだけで完成できる、という点が大きい。

「自分にも作れそうで、売れそうで、現場で働くひとに喜ばれそう。」

一輪車を選んだのはそれが理由だった。

 

そこから様々な一輪車のメーカーに問い合わせて市場を調査をする傍ら試作を開始。

電動化した車体に乗用の台車をとりつけることで一輪車をモビリティ化する「ねこのしっぽ」が生まれたのもこの時だ。(現在は終売)

 

 

実用性に加え、遊び心を加えたいと思ったのがねこのしっぽのアイディアの源だった。

 

電気もハードウェアも全く知識がない中で、逐一調べながら部品を組み合わせ、開発を進める試行錯誤の日々が始まった。

 

山積みの課題の中で

 

欲しいサイズの部品が市販で売っていない。ジャストフィットなものはほぼ手に入らない状況の中、金型を起こす資金もない。取り付け方を工夫してありものでなんとかするしかなかった。

 

部品を組み合わせて作るだけ、といっても課題は山積みだった。

 

 

当時はモーター内臓のホイールもひとつひとつ手作業で組み込まれており、一台作るのに約1時間の時間を要した。

開発費として当時の貯金の70万円をはたいて捻出したため生活費は一気に0になった。

コンテストのサポーターの町工場の方に手伝ってもらいながら、なんとか試作一号機を完成させた。

 

試行錯誤の連続だったが、電動化した一輪車が初めて動いた日のことは嬉しくて今でもよく覚えている。

 

 

結果、先のビジネスコンテストは2位入賞。

入賞の賞金は50万円、開発費を取り返せたことは素直に嬉しかった。

 

 

その後E-ca kitはネット上に情報を乗せると、建設会社やインフラの管理会社からの問い合わせがあり、少数だが販売にもつながった。

 

電動一輪車を求めている人は一定数いて、情報発信を続ければ見つけてもらえる、そんな実感を初めて感じた瞬間だった。結局試作モデルは2台のみ販売にこぎつけた。

 

最初の成功。地道な販売活動と地元コミュニティでの受け入れ

 

ニーズの高まりとさらに売れる手応えは感じていたが、販路を拡大させるための営業のやり方がわからなかった。製品としての完成度もまだまだだった。

 

数年後、以前より交流の深かった創業者の寺嶋と合流する形でCuboRexの第2創業をスタート。

(参考:CuboRexのあゆみ、そしてこれから

寺嶋が考案したクローラユニットと、自身が作ったE-cat kitをメインプロダクトとし、改めて企業として再スタートを切った。

 

E-cat kitは、まずは寺嶋との関わりも深い和歌山のみかん農家に向けて販売実績を地道に重ねていった。初期ロットとして手作り、手売りの状態で10セット以上を販売。農家の方に地元の若者として受け入れられたことも功を奏し、反応は上々だった。

 

 

 

転機となったJAでの取り扱いと全国展開。次なるステップへ

 

ユーザーから口コミが広がり、JAでの取り扱いが始まったところから全国の農家に広まっていった。

そこから自社HPやメディア露出からの引き合いが増え、農家を中心に日本各地にユーザーが徐々に増えていく。

量産の体制を整え、一号機から部品を全て見直し、少しずつアップデートを重ねていった。

 

人力で押すことが当たり前だった収穫物や資材の運搬作業。かつて重労働の代名詞だった「運ぶ」という作業が、電気の力で魔法のように楽になる。一度使うともう手動には戻れない、そんな嬉しい反応が相次いだ。

 

 

ユーザーが順調に増える中、製品としての欠点も見えてきた。屋外の現場の条件は様々で、現行機のスペックではすべてのニーズに答えることは難しい。

次なる進化の構想は早い段階で頭の中にあった。

 

後継機開発に伴う試練と成長痛

 

ユーザーからも社内からもアップグレードを望む声は少なくなかった。

だが当時は開発リソースが足りず実現できないでいた。

 

事業拡大を続けた2022年、技術開発の社員が増えたことで、やっとE-cat kitの後継機の開発が始まった。

 

最新モデルは開発に伴う苦しさも大きかった。

ごく最近まではベンチャーらしく、とにかくスピードと技術者の自由度を持って荒削りに開発を進めてきた。基本的な開発フローに則った開発ができていない状態で走り続けてきたが、それでなんとかなっていた。

 

 

しかし、一見順調に思えていた部品の設計〜量産までの工程の一つ一つのプロセスに関して遅れが発覚。

一部の部品はまた0からのスタートになったりと、リリース予定日を目前にしたタイミングで数々の問題が浮上した。

今回ばかりは深刻な事態となり、全社で何度も議論と修正を重ねた。

 

 

今までのやり方の未熟さを痛感した。

 

社員や外部の協力者のサポートを通して開発体制から大転換を行い、メンバーは全員フォローに走り回ってくれた。遅れを取りながらもなんとか発売にこぎつけた。

 

進化したE-cat kitの性能

 

最新モデル E-cat kit2はHikokiの電動工具のバッテリーが利用可能になった。

電動工具バッテリーの利用は、嘉数が最初の電動自転車の構想を練っていた時からの念願だ。

現場にある道具と合わせてより汎用的に使え、替えのバッテリーも入手がしやすい。

加えて、かねてからユーザーから要望の多かった防水性能の向上もかなえた。

 

従来機では叶わなかったブレーキも、自社の技術力で実現した薄型モーターのおかげで標準装備が可能になり、安全性も向上した。

 

性能が向上したことにより、農業だけではなく土木の現場や建設現場など、よりタフな環境での使用も可能になった。

様々な業界からのアップデートを待つ声に応え、事前予約分だけで初回ロットは完売。一時製造が追いつかない事態にまでなり、嬉しい悲鳴をあげた。

 

 

 

E-cat kitは今後も進化を続ける。

さらに幅広い現場にフィットするものや、品質のさらなる向上など

より多くの現場に適応するべく随時アップデートを実施する予定だ。

 

モーター内蔵型のタイヤとバッテリー、それらのコントロール技術という要素技術を使って、一輪車というフレームに囚われず様々な業界とのコラボレーションも生まれている。

 

 

ユーザーへのメッセージ

 

嘉数「E-cat kit2には従来機の開発時とは比べものにならないほど弊社の技術を詰め込みましたが、製品も会社もまだまだ進化の途中、とにかく現場で使い倒して欲しいです。

 

様々な産業で人手不足や働き方改革が叫ばれて久しいですが、屋外での作業や小さな現場が大きな工場や倉庫のようにいきなりすべての仕事を自動化したりするのは難しいと考えています。

 

私たちは、まずは現場の「重い」「疲れる」「危険」といった身近な課題を、

道具を機械化することで現場に寄り添った形で解決し、社会課題に挑んでいきたいです。

あらゆる産業の自動化はその先にあると思っています。

 

今後も弊社の技術力でみなさんの現場の”キツい”を解決していきます。

ぜひ弊社へご要望をお寄せください」

 

 

 

 

 

E-cat kit2の詳細はこちら

https://cuborex.com/product/?id=6

 

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